【2026年6月更新】死亡保険60代夫婦|葬儀費と生活費3基準
更新:
執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)

死亡保険 60代夫婦
葬儀費 保険
生活費不足
遺族年金
終身保険 見直し
死亡保険金 非課税
老後資金
目次
60代夫婦の死亡保険は「大きく残す」より「足りない分を残す」
60代夫婦の 死亡保険 は、現役時代のように子どもの教育費や住宅ローンを大きくカバーする目的から、葬儀費、死後整理費、残された配偶者の生活費不足を埋める目的へ変わります。
生命保険文化センターの(2024(令和6)年度「生命保険に関する全国実態調査」)では、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は2人以上世帯で89.2%、世帯年間払込保険料は平均35.3万円とされています。加入している世帯は多い一方で、「いまの夫婦に合った保障額かどうか」は別問題です。
この記事では、60代夫婦が死亡保険を見直すときに確認したい基準を、葬儀費、配偶者の生活費、手元資金と保険料負担の3つに絞って整理します。すぐ解約するかどうかではなく、まず「何にいくら足りないのか」を見える化するところから始めましょう。
まず確認したい3基準の全体像
- 1葬儀費と死後整理費を、預貯金で払うのか死亡保険金で残すのかを決めます。
- 2残された配偶者の年金収入と生活費を比べ、毎月の不足額を見積もります。
- 3保険料を払い続けても老後資金が圧迫されないか、固定費として確認します。
- 4貯蓄性のある保険は、解約返戻金と税金の影響を確認してから判断します。
- 5子どもに多額を残す目的より、配偶者が困らない金額を優先して設計します。
基準1:葬儀費は「平均額」より夫婦の希望で決める
最初に確認したいのは 葬儀費 です。一般葬、家族葬、一日葬、直葬では費用が大きく変わります。生命保険文化センターの(葬儀にかかる費用はどれくらい?)では、2024年調査における葬儀費用の平均総額は約119万円と紹介されています。前回調査の約111万円から約8万円増えており、葬儀の形式も家族葬50.0%、一般葬30.1%、一日葬10.2%、直葬・火葬式9.6%と分かれています。
ただし、平均額だけで死亡保険金を決めるのはおすすめしません。実際の費用は、地域、宗教・宗派、会葬人数、飲食や返礼品の有無、お墓や納骨の方法で変わります。60代夫婦なら、「家族だけで見送りたい」「菩提寺との関係を大切にしたい」「子どもに手続きを任せすぎたくない」など、夫婦の希望を先に話しておくほうが現実的です。
家族葬を希望する場合でも、葬儀費だけで終わるとは限りません。お墓、納骨、遺品整理、未払い医療費、公共料金の精算、賃貸住宅なら退去費用なども含めて見積もりましょう。葬儀関連費だけを保険で備えるなら100万円から300万円程度を検討範囲にする家庭が多いですが、十分な預貯金があるなら死亡保険にこだわる必要はありません。
葬儀費だけなら死亡保険はいらないのでしょうか?
預貯金があるなら、葬儀費のために死亡保険を残す必要はないですか?
預貯金で無理なく払えるなら、死亡保険を必ず残す必要はありません。ただし、相続手続き中に家族がすぐ使えるお金が少ない、配偶者の生活費まで取り崩すのが不安、といった場合は少額の死亡保険を残す選択肢があります。
基準2:残された配偶者の生活費不足を月額で見る
次に見るべきは、配偶者が一人になった後の 生活費不足 です。夫婦二人の生活費が、そのまま半分になるわけではありません。住居費、通信費、光熱費、車関連費、保険料、固定資産税、マンション管理費などは、一人になっても大きく下がらないことがあります。
総務省統計局の(家計調査報告 2025年平均結果の概要)では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の実収入は月254,395円、消費支出は月263,979円、非消費支出を含めた差額分は月42,434円とされています。また、65歳以上の単身無職世帯では実収入が月131,456円、消費支出が月148,445円、差額分は月29,980円です。
もちろん、これは全国平均であり、持ち家か賃貸か、車の有無、医療・介護の状況、地域の物価によって必要額は変わります。それでも、死亡保険金を考えるときは「一時金でいくら残すか」ではなく、「毎月いくら不足しそうか」から逆算するのが基本です。たとえば、残された配偶者の年金とその他収入で月3万円不足するなら、5年で180万円、10年で360万円が不足額の目安になります。
60代の死亡保険は、なんとなく1,000万円を残すより、葬儀費と生活費の不足額を足し算して決めるほうが、家計に合いやすくなります。
遺族年金は「もらえる前提」だけでなく条件を確認する
60代夫婦の死亡保障では 遺族年金 の確認も欠かせません。会社員・公務員だった期間があるか、自営業中心だったか、夫婦それぞれの年金記録、子どもの有無、年齢によって受け取れる年金は変わります。
厚生労働省の(遺族厚生年金の見直しについて)では、遺族厚生年金の見直しは2028年4月施行予定とされています。ページ内では、今回の見直しの影響を受けない人として「60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方」などが示されています。つまり、現在60代の夫婦では大きな影響を受けにくいケースもありますが、制度の思い込みだけで判断しないことが大切です。
特に確認したいのは、夫が亡くなった場合と妻が亡くなった場合で、世帯収入がどう変わるかです。ねんきん定期便、ねんきんネット、年金見込額をもとに、夫婦それぞれのケースで「残る年金」「減る年金」「保険で補うべき期間」を分けて整理しておきましょう。
死亡保険の必要額を見直す手順
- 1夫婦それぞれの葬儀費、納骨費、死後整理費の希望額を書き出します。
- 2残された配偶者の年金見込額と、現在の生活費から一人暮らし後の支出を見積もります。
- 3不足額を5年分、10年分など期間別に計算し、死亡保険で補う範囲を決めます。
- 4現在加入中の保険証券を確認し、死亡保険金、保険期間、保険料、解約返戻金を整理します。
- 5預貯金、NISA、個人年金保険、退職金の残高と合わせて、保険だけに頼りすぎない形に調整します。
基準3:保険料が老後資金を削っていないか確認する
3つ目の基準は 保険料負担 です。60代は、退職前後で収入が変わりやすい時期です。現役時代と同じ感覚で死亡保険料を払い続けると、毎月の固定費が重くなり、医療費、介護費、住宅修繕費、物価上昇への備えが薄くなることがあります。
生命保険文化センターの全国実態調査では、2人以上世帯の年間払込保険料は平均35.3万円です。月に直すと約2.9万円ですが、これは死亡保障、医療保障、個人年金保険などを含む平均です。60代夫婦の場合、収入が年金中心に移ると、同じ保険料でも家計への重みは大きくなります。
死亡保険を残す目的が葬儀費中心なら、保険料を払い続けて大きな保障を持つより、必要な金額まで減額する、払済保険にする、保険期間を整理するなどの選択肢があります。払済保険とは、以後の保険料の支払いをやめ、解約返戻金をもとに保障を小さくして残す方法です。ただし、商品によって利用可否や変更後の保障額は異なります。
終身保険と定期保険はどちらが60代向きですか?
60代夫婦なら、死亡保険は終身保険と定期保険のどちらが向いていますか?
葬儀費をいつ亡くなっても残したいなら終身保険が候補になります。一方、配偶者の生活費不足を一定期間だけ補いたいなら定期保険も選択肢です。既契約の内容、保険料、健康状態で合う形は変わるため、先に必要額を計算してから商品を比べましょう。
60代夫婦の必要保障額は「葬儀費+生活費不足−使える資産」
死亡保険金の目安は、次の考え方で整理できます。
葬儀費と死後整理費に、残された配偶者の生活費不足を加え、そこからすぐ使える預貯金、退職金、死亡退職金、すでに準備済みの資産を差し引きます。これが、死亡保険で補いたい金額の基本です。
たとえば、葬儀・死後整理費が200万円、配偶者の生活費不足が10年で360万円、すぐ使える預貯金から300万円を充てられるなら、死亡保険で補う目安は260万円です。この場合、1,000万円の保障を維持する必要があるかは、保険料とのバランスで再検討できます。
一方で、配偶者が病気がち、持ち家の修繕予定がある、子どもに迷惑をかけたくない、相続手続き中の生活資金を確保したいといった事情があれば、少し厚めに残す判断もあり得ます。平均額に合わせるのではなく、自分たちの家計に合わせて決めることが重要です。
60代夫婦にとって死亡保険は、残された家族に多く残すためだけでなく、手続きや生活の混乱を小さくするための設計でもあります。
死亡保険金の非課税枠も確認しておく
死亡保険金は、相続手続きや税金の面でも確認が必要です。国税庁の(相続税の課税対象になる死亡保険金)では、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金を相続人が受け取る場合、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までが非課税限度額とされています。
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人なら、非課税限度額は500万円×3人で1,500万円です。ただし、相続人以外が受け取る死亡保険金にはこの非課税の適用がありません。また、契約者、被保険者、受取人の組み合わせによって、相続税ではなく所得税や贈与税の対象になる場合もあります。
税金だけを目的に保険を増やす必要はありませんが、受取人が古いままになっている、先に亡くなった親族の名前になっている、離婚や再婚後に変更していないといったケースはトラブルの原因になります。保障額の見直しと一緒に、受取人の確認も済ませておきましょう。
やってはいけない見直しは「解約だけ先にする」こと
保険料が高いと感じたとき、すぐ解約したくなるかもしれません。しかし、60代で死亡保険を解約すると、健康状態によっては再加入が難しくなる場合があります。加入できても、保険料が高くなったり、保障内容が限定されたりすることがあります。
見直しの順番は、解約ではなく棚卸しからです。保険証券を並べて、死亡保障、医療保障、がん保障、個人年金、NISAや預貯金を一つの表にまとめると、残すべき保障と減らせる保障が見えやすくなります。
特に60代夫婦は、死亡保障だけを切り離して考えるのではなく、老後生活費、医療費、介護費、相続、配偶者の住まいまで含めて判断することが大切です。迷う場合は、現在の保険を残した場合、減額した場合、払済にした場合、解約した場合を並べて比較してから決めましょう。
まとめ:重要ポイント
- 160代夫婦の死亡保険は、教育費よりも葬儀費、死後整理費、配偶者の生活費不足を補う目的が中心です。
- 2葬儀費は平均約119万円を参考にしつつ、家族葬、一般葬、納骨、遺品整理など夫婦の希望から見積もることが大切です。
- 3配偶者の生活費不足は、年金見込額と一人暮らし後の支出を比べ、月額不足から逆算します。
- 4保険料が老後資金を圧迫している場合は、解約だけでなく減額、払済、保障の組み替えも検討します。
- 5死亡保険金の必要額は、葬儀費と生活費不足から使える資産を差し引き、受取人や非課税枠も確認して決めましょう。
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