【2026年6月更新】生命保険と第3号被保険者|専業主婦の不足額3基準
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執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)

生命保険
第3号被保険者
専業主婦
遺族年金
社会保険適用拡大
NISA
iDeCo
第3号被保険者の見直しで、専業主婦世帯が不安になる理由
「第3号被保険者は廃止されるの?」「専業主婦の年金が急に減るのでは?」と不安を感じる方が増えています。2026年6月時点で、会社員や公務員に扶養される配偶者が対象の 第3号被保険者 制度そのものを一律に廃止することは決まっていません。
一方で、2025年6月に成立した年金制度改正により、短時間労働者の社会保険加入は広がる方向です。いわゆる「106万円の壁」だけを見て働き方を決める時代から、社会保険料、将来の厚生年金、遺族年金、生命保険、NISAやiDeCoまで含めて家計を見直す時代に変わりつつあります。
この記事では、専業主婦世帯が生命保険を考えるときの不足額を「制度変更」「夫に万一があった後の生活費」「妻自身の老後」の3基準で整理します。ニュースに振り回される前に、わが家の数字で判断できる状態を目指しましょう。
先に結論:不足額は3つに分けると見えやすい
- 1妻が働く可能性がある場合は、社会保険加入後の手取り減だけでなく、将来の厚生年金や傷病手当金の有無まで確認します。
- 2夫に万一があった場合は、遺族年金、預貯金、団信、勤務先の死亡退職金を差し引いて、生活費と教育費の不足額を出します。
- 3妻自身の老後は、厚生年金加入期間が短いほど基礎年金中心になりやすいため、保険だけでなくNISAやiDeCo、働き方も含めて考えます。
- 4生命保険で埋める中心は死亡時の資金不足であり、老後資金のすべてを貯蓄性保険に任せないようにします。
基準1:第3号被保険者は廃止決定ではなく、縮小方向で考える
2026年6月時点で押さえたいのは、第3号被保険者の一律廃止ではなく、パートやアルバイトなど短時間で働く人への厚生年金・健康保険の適用拡大です。厚生労働省の(社会保険の加入対象の拡大について)では、短時間労働者の企業規模要件を10年かけて縮小・撤廃すること、月額8.8万円以上という賃金要件を撤廃する方向が説明されています。
特に影響が大きいのは、雇用契約上の所定労働時間が 週20時間以上 になるケースです。今後は、勤め先の規模や最低賃金の状況によって、配偶者の扶養を外れて自分で厚生年金・健康保険に加入する人が増えていきます。
ただし、週20時間未満で働く場合でも、年収130万円以上になると原則として第3号被保険者から外れ、国民年金と国民健康保険の保険料が発生します。つまり「106万円の壁がなくなるなら何も気にしなくてよい」ではなく、106万円、130万円、勤務先の社会保険加入条件を分けて確認することが大切です。
第3号被保険者なら生命保険は少なくてよいですか?
妻が第3号被保険者なら、国民年金には入っている扱いですよね。夫の生命保険は少なくても大丈夫でしょうか?
国民年金に加入していることと、夫が亡くなった後の生活費が足りることは別です。遺族年金、住宅ローン、教育費、妻が働ける時期を合わせて、不足額を計算する必要があります。
社会保険に入ると手取りは減るが、保障は増えることもある
妻が勤務先の社会保険に加入すると、厚生年金保険料や健康保険料が給与から差し引かれるため、短期的には手取りが減ることがあります。扶養内で働いていた家庭ほど、この変化は心理的に大きく感じやすいでしょう。
一方で、社会保険に加入すると、将来は基礎年金に厚生年金が上乗せされます。健康保険では、病気やけが、出産で会社を休んだときの給付が手厚くなる場合もあります。厚生労働省は、従業員数50人以下の企業などで新たに加入対象となる短時間労働者について、標準報酬月額12.6万円以下など一定要件のもと、3年間の保険料負担軽減措置も示しています。
生命保険の見直しでも、この変化は無視できません。妻が将来も第3号被保険者のままなのか、数年以内に厚生年金へ加入するのかで、妻自身の老後年金や夫死亡後の就労見込みが変わるからです。
手取りが一時的に下がるかどうかだけでなく、将来の年金と働けない時の保障まで見て、家計全体で判断することが大切です。
基準2:夫に万一があったときは、遺族年金だけで判断しない
専業主婦世帯の生命保険で最も大きなテーマは、夫に万一があったときの生活費です。子どもがいる場合、要件を満たせば 遺族年金 を受け取れることがありますが、金額は家族構成や夫の厚生年金加入状況によって変わります。
日本年金機構の(遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額))によると、2026年4月分からの遺族基礎年金は、昭和31年4月2日以後生まれの子のある配偶者で年額847,300円に子の加算額が付きます。子の加算額は1人目・2人目が各243,800円、3人目以降が各81,300円です。
たとえば子ども1人の専業主婦世帯なら、遺族基礎年金は年額1,091,100円が目安になります。ただし、これは生活費のすべてを賄う金額ではありません。実際には、遺族厚生年金、妻の収入、預貯金、団信で消える住宅ローン、教育費の残りを合わせて考える必要があります。
2028年の遺族厚生年金見直しは、家庭の条件で影響が違う
2028年4月施行予定の遺族厚生年金見直しも、専業主婦世帯が知っておきたい制度変更です。厚生労働省の(遺族厚生年金の見直しについて)では、18歳年度末までの子どもがいない配偶者について、原則5年間の有期給付となる範囲や経過措置が説明されています。
重要なのは、すべての専業主婦が一斉に不利になるわけではない点です。すでに遺族厚生年金を受給している人、60歳以降に受給権が発生する人、18歳年度末までの子どもを養育している間の給付、2028年度に40歳以上になる女性は、今回の見直しによる影響を受けないとされています。
一方で、子どものいない30代・40代前半の夫婦や、妻の収入が少なく就労再開まで時間がかかる家庭では、夫死亡後の一定期間の生活費を生命保険で補う必要性が高まることがあります。ニュースの見出しだけで判断せず、「子どもあり・なし」「妻の年齢」「住宅ローン」「妻の就労可能性」に分けて確認しましょう。
死亡保障の不足額を出すために確認したいこと
- 1夫に万一があった後の毎月の生活費を、現在の支出から住宅ローン返済や夫本人の支出を除いて見積もります。
- 2遺族基礎年金と遺族厚生年金の見込み額を確認し、毎月の生活費にどれだけ充てられるかを計算します。
- 3住宅ローンの団信、勤務先の死亡退職金、弔慰金、預貯金を一覧にして、すでに備えられている金額を把握します。
- 4子どもの教育費は、未就学、小学生、中高生、大学進学時など時期別に分けて不足しやすい年を確認します。
- 5妻が働き始める可能性がある場合は、いつから、月いくらの収入を見込めるかを慎重に置きます。
必要保障額は、平均ではなくわが家の生活費から逆算する
死亡保障は、保険会社のランキングやおすすめ商品から選ぶ前に、まず 必要保障額 を計算するのが先です。考え方は、今後必要なお金から、公的保障や手元資金を差し引くことです。
生命保険文化センターの(2025(令和7)年度 生活保障に関する調査(速報版))では、死亡保険金の必要額は平均1,569万円、加入金額は平均887万円とされています。平均だけを見ると「うちは少なすぎるのでは」と感じるかもしれませんが、必要額は子どもの人数、住宅ローン、妻の収入、預貯金で大きく変わります。
たとえば、夫死亡後に月25万円の生活費が必要で、遺族年金や妻の収入で月15万円を見込めるなら、月10万円の不足です。これが10年間続くなら1,200万円、教育費や引っ越し費用があれば上乗せします。まとまった保険金で備える定期保険にするのか、毎月給付型の収入保障保険にするのかは、家計管理のしやすさと保険料のバランスで決めるとよいでしょう。
専業主婦本人にも死亡保険は必要ですか?
収入がない専業主婦でも、妻本人の死亡保険に入る必要はありますか?
収入の有無だけでは決まりません。小さな子どもがいて家事・育児の外部サービス費が必要になる、親の介護を担っている、葬儀費用を準備したいなどの場合は、一定額を検討する余地があります。
基準3:妻自身の老後は、基礎年金中心になりやすい
第3号被保険者の期間は、国民年金に加入している扱いになります。ただし、会社員として厚生年金に加入していない期間が長いと、妻自身の老後年金は基礎年金中心になりやすくなります。夫の年金や遺族年金だけを前提にすると、離婚、死別、夫婦の年齢差、医療・介護費の増加に対応しにくくなることがあります。
老後資金の目安として、同じ生命保険文化センターの調査では、夫婦2人の老後の最低日常生活費は平均月23.9万円、ゆとりある老後生活費は平均月39.1万円とされています。もちろん、持ち家か賃貸か、地域、健康状態で必要額は変わりますが、基礎年金だけでは余裕を持ちにくいことは意識しておきたいところです。
ここで生命保険を使う場合、終身保険や個人年金保険のような貯蓄性商品が候補になることがあります。ただし、途中解約時の元本割れ、インフレに弱い面、NISAやiDeCoとの違いを理解しないまま加入するのは避けたいところです。
死亡時の不足は保険で備え、老後に使うお金は流動性や運用リスクも見ながら複数の手段に分けると、家計が崩れにくくなります。
NISA・iDeCoと保険は、使う目的で分ける
専業主婦世帯では、夫の収入に家計が偏りやすいため、死亡保障と老後資金を同じ商品で準備したくなることがあります。しかし、近い将来使うお金、死亡時に必要なお金、老後まで使わないお金は、分けて考えたほうが失敗しにくくなります。
金融庁の( NISAを利用する皆さまへ)では、NISAの年間投資枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、合計360万円、非課税保有限度額は合計1,800万円とされています。NISAは途中売却しやすい一方、運用成果は変動し、元本割れの可能性があります。
iDeCoは老後資金づくりに向く制度ですが、原則60歳まで引き出せません。厚生労働省の(私的年金制度、iDeCoの改正のポイント)では、2026年12月から会社員の拠出限度額引き上げや加入可能年齢の拡大が示されています。一方、第3号被保険者のiDeCo拠出限度額は月2.3万円が基本で、本人に課税所得が少ない場合は掛金の所得控除メリットを受けにくい点もあります。
教育費や生活防衛資金は預貯金、長期の老後資金はNISAやiDeCo、死亡時の生活費不足は生命保険という整理にすると、商品選びより先に「何のためのお金か」が見えやすくなります。
妻の保障は、家事・育児・介護の代替費用で考える
専業主婦本人の生命保険は、夫の死亡保障ほど大きな金額にならないことが多いです。それでも、妻が亡くなった場合に家事代行、ベビーシッター、保育時間の延長、夫の時短勤務や転職などで支出増や収入減が起きる家庭があります。
特に、未就学児がいる家庭、夫の勤務時間が長い家庭、近くに頼れる親族がいない家庭、妻が親の介護を担っている家庭では、妻の死亡時にも一定の資金が必要です。反対に、子どもが独立していて預貯金も十分なら、葬儀費用程度の整理で足りることもあります。
大切なのは、「専業主婦だから不要」「収入がないから保険金はゼロでよい」と決めつけないことです。家庭内で担っている役割をお金に置き換えると、必要な保障額が現実的に見えてきます。
見直しの順番を間違えると、保険料が重くなる
第3号被保険者や遺族年金のニュースを見て不安になったとき、すぐに保険を増やすのは避けたいところです。先に確認すべきなのは、公的保障と家計の数字です。
たとえば、夫の死亡保障を増やした結果、毎月の保険料が重くなり、NISAの積立や教育費の準備が止まってしまうと本末転倒です。逆に、保険料を下げすぎて死亡時の生活費が不足するのも避けなければなりません。
おすすめの順番は、ねんきん定期便で夫婦それぞれの年金見込みを確認し、遺族年金と団信を整理し、教育費と生活費を時期別に書き出し、最後に生命保険で埋める金額を決める流れです。2026年以降は社会保険の適用拡大や遺族厚生年金の見直しなど、家庭の前提が変わりやすい時期です。だからこそ、保険、年金、資産形成を同じ表で並べて確認することが重要です。
まとめ:重要ポイント
- 12026年6月時点で第3号被保険者制度の一律廃止は決まっていませんが、短時間労働者の社会保険加入は拡大する方向です。
- 2妻が社会保険に加入する場合は、手取り減だけでなく、将来の厚生年金や傷病手当金など増える保障も確認することが大切です。
- 3夫に万一があったときの生命保険は、遺族年金、団信、預貯金、妻の収入を差し引いた不足額から逆算します。
- 4妻自身の老後資金は基礎年金中心になりやすいため、保険だけでなくNISA、iDeCo、預貯金、働き方を組み合わせて考えます。
- 5専業主婦本人の死亡保障も、家事・育児・介護の代替費用が発生する家庭では一定額を検討する余地があります。
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