【2026年8月更新】生命保険と住宅ローン|共働き夫婦の不足3基準
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執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)

生命保険
住宅ローン
共働き夫婦
団信
ペアローン
収入保障保険
遺族年金
目次
まず結論:団信だけでなく生活費の穴を見る
共働き夫婦が住宅ローンを組むとき、最初に確認したいのは「ローンが消えるか」だけではありません。片方に万が一があった後、残された家族が今の住まいで暮らし続けられるか、教育費や生活費を維持できるかまで見る必要があります。
2026年8月時点では、住宅ローン金利の上昇を意識する家庭が増え、ペアローンや収入合算を選ぶ夫婦も珍しくありません。その一方で、団体信用生命保険、いわゆる団信は借り方によって効き方が変わります。この記事では、 生命保険と住宅ローン を一緒に見直すための保障不足3基準を整理します。
なお、保険や住宅ローンの適否は年収、家族構成、健康状態、勤務先の福利厚生、ローン契約によって変わります。この記事は一般的な考え方を整理するもので、実際の契約前には金融機関、保険会社、FPなどに個別条件を確認してください。
この記事で確認する3つの基準
- 1住宅ローンが単独ローン、ペアローン、連帯債務のどれに当たるかを確認します。
- 2片方が亡くなった後に残る生活費、教育費、固定費を年単位で見積もります。
- 3金利上昇や働き方の変化が起きても保険料を払い続けられるかを確認します。
- 4団信の疾病保障と民間の生命保険、医療保険、就業不能保障の重複を整理します。
2026年8月の住宅ローン環境で見落としやすい点
ここ数年の金利環境の変化で、住宅ローンは「借りられる金額」よりも「返し続けられる金額」が重視される局面に入っています。(住宅ローン利用者の実態調査)によると、2025年4月から9月に住宅ローンを借りた人の金利タイプは変動型が75.0%で、ペアローンまたは収入合算の利用は38.7%でした。さらに、今後1年間で住宅ローン金利が「現状よりも上昇する」と考える利用者は73.7%にのぼります。
変動金利を選ぶ場合、将来の返済額上昇に備えた家計余力が必要です。同調査では、変動型・固定期間選択型の利用者について、毎月返済額が3万円増えた場合に「返済目処や資金余力があるので返済継続」と答えた割合は24.2%にとどまりました。固定金利を選ぶ場合も、借入時点の毎月返済額が高くなりやすく、保険料とのバランスが課題になります。
また、住宅価格そのものも家計への圧力になっています。国土交通省の(住宅市場動向調査の結果)では、令和6年度の住宅購入資金の平均値は注文住宅で6,188万円、分譲集合住宅で4,679万円でした。家を買った直後は家具・家電などの支出も重なりやすいため、生命保険を増やす前に、現金の予備資金を残せているかも確認したいところです。
団信に入っていれば生命保険は減らしてよいですか?
住宅ローンに団信が付いているなら、死亡保険は大きく減らしても大丈夫でしょうか?
ローンの名義と団信の対象範囲によります。団信で住宅ローンが消えても、生活費、教育費、修繕費、管理費、固定資産税は残ります。まずはローン残高ではなく、残された家族の毎月の不足額を見て判断しましょう。
基準1:ローン名義と団信の効き方を確認する
1つ目の基準は、住宅ローンの借り方です。単独ローンなら、契約者に万が一があったときに団信でローン残高がなくなるのが基本です。一方、ペアローンでは夫婦それぞれが別々にローンを借りるため、原則として亡くなった人の借入分だけが団信の対象になります。
たとえば夫婦で3,000万円ずつ、合計6,000万円のペアローンを組んでいる場合、夫に万が一があっても妻の3,000万円分は残る可能性があります。連帯債務や連帯保証、夫婦のどちらかに万が一があったときに残債の全部または一部を保障する連生団信の有無でも結果は変わるため、 団信の対象者と消える残債 を必ず確認しましょう。
団信は住まいを守る強い仕組みですが、家族の暮らし全体を守る仕組みではありません。ローンが消えた後に残る支出まで見ることが大切です。
ペアローンは「残る返済」と「残る家事」を分けて考える
共働き夫婦の保障不足は、収入額だけでは判断できません。ペアローンで片方の残債だけが消える場合、残された配偶者は自分名義のローンを返しながら、家事・育児・仕事を一人で回すことになります。
たとえば、夫婦それぞれが月12万円ずつ手取り収入を住宅ローンや生活費に充てていた家庭で、片方の収入がなくなると、単純に月12万円の穴が空くとは限りません。亡くなった人の食費や交通費は減る一方で、保育延長、家事代行、病児保育、実家への移動費、配偶者の時短勤務による収入減が増えることがあります。
そのため、必要保障額は「夫婦で同じ金額」にそろえるより、夫が亡くなった場合、妻が亡くなった場合を別々に試算するほうが現実に近づきます。特に子どもが小さい家庭では、家計上の稼ぎ手だけでなく、育児や家事を担っていた人の保障も見落とさないようにしましょう。
ローン契約書と団信で確認したい項目
- 1住宅ローンの名義が単独、ペアローン、連帯債務、連帯保証のどれに当たるかを確認します。
- 2団信の被保険者が誰で、死亡時にどの残債が消えるのかを確認します。
- 3がん団信や3大疾病団信は、診断だけで対象になるのか、就業不能状態などの条件があるのかを確認します。
- 4金利上乗せ型の団信は、保障内容だけでなく、毎月返済額への影響を確認します。
- 5借り換え時には、健康状態によって新しい団信に加入できない可能性も確認します。
基準2:残された家族の生活費不足を試算する
2つ目の基準は、死亡後の生活費です。共働き夫婦では、片方の収入がなくなっても、もう片方の収入と遺族年金で何とかなると考えがちです。しかし、実際には家事外注、保育、通勤、実家への移動、子どものメンタルケアなど、死亡後に増える支出もあります。
公的年金も必ず確認しましょう。日本年金機構の(遺族基礎年金)では、令和8年4月分から、子のある配偶者が受け取る年金額は847,300円に子の加算額を加えた額です。1人目・2人目の子の加算額は各243,800円、3人目以降は各81,300円です。会社員や公務員など厚生年金に加入している人が亡くなった場合は、要件を満たせば(遺族厚生年金)も対象になり、原則として死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3が目安になります。
教育費も、住宅ローンと同じくらい長く続く固定費です。文部科学省の(令和5年度子供の学習費調査結果のポイント)では、幼稚園3歳から高校3年まで15年間の学習費総額は、すべて公立で約614万円、すべて私立で約1,969万円でした。大学費用や自宅外通学費は別に考える必要があるため、子どもの年齢が低い家庭ほど、死亡保障を短く見積もりすぎないことが大切です。
試算の出発点は、現在の毎月支出から「亡くなった人にかかっていた支出」を引き、そこに「死亡後に増える支出」を足すことです。そのうえで、残された配偶者の手取り収入、遺族年金、児童手当、貯蓄を差し引くと、不足額が見えます。
ペアローン夫婦はどちらの保障を厚くすべきですか?
夫婦で同じくらい稼いでいます。生命保険も同じ金額にすればよいですか?
同額とは限りません。収入額だけでなく、住宅ローン名義、家事育児の分担、子どもの年齢、実家の支援、片方が亡くなった後の働き方で必要保障額は変わります。夫婦それぞれで不足額を別々に出すのがおすすめです。
基準3:金利上昇と収入減に耐えられる保険料かを見る
3つ目の基準は、家計の継続性です。住宅ローン返済が重い家庭ほど、安心のために生命保険を厚くしたくなります。ただし、保険料が高すぎると、金利上昇や育休中の収入減が起きたときに家計を圧迫します。
目安としては、死亡保障は「必要な期間に必要な金額だけ」を意識します。たとえば、変動金利でローンを組んでいる家庭なら、毎月返済額が1万円、3万円、5万円増えた場合の家計表を作り、そのうえで保険料を払えるか確認します。育休、時短勤務、転職、介護休業などで片方の収入が下がる可能性がある家庭は、現在の世帯年収を前提にしすぎないほうが安全です。
子どもが独立するまでの生活費不足には収入保障保険、相続や葬儀費用には終身保険、病気や働けない期間には医療保険や就業不能保障というように、目的を分けると無駄が減りやすくなります。 保険料を払い続けられるか は、保障額と同じくらい重要な判断軸です。
住宅ローンが不安なときほど、保険を足す前に家計表を見ましょう。必要額を数字にすると、増やすべき保障と減らせる保障が分かれます。
死亡保障は収入保障保険で調整しやすい
住宅ローンがある子育て世帯では、死亡保障をすべて終身保険で持つより、収入保障保険を組み合わせる方が家計に合うことがあります。収入保障保険は、万が一のときに毎月いくらという形で保険金を受け取るタイプの保険です。時間がたつほど必要な保障額が減る家庭と相性がよい仕組みです。
たとえば子どもが小さい時期は毎月15万円の不足があるものの、10年後には不足が毎月7万円に下がる家庭もあります。この場合、必要保障額は年々減っていきます。住宅ローン返済と教育費のピークを踏まえて、必要保障額の山に合わせることがポイントです。
一方で、配偶者が自営業、フリーランス、転職直後、時短勤務中の場合は、会社員よりも公的保障や勤務先制度が薄くなることがあります。傷病手当金の有無、死亡退職金、弔慰金、住宅手当、育児支援制度まで確認すると、民間保険で補うべき範囲が絞りやすくなります。
団信の疾病保障と民間保険は役割を分ける
最近の住宅ローンでは、がん団信、3大疾病団信、8大疾病団信など、死亡以外の保障を付けられる商品もあります。保障を広げると安心感は増えますが、金利上乗せや適用条件を確認しないまま選ぶと、民間保険と重複することがあります。
たとえば、がんと診断されたらローン残高がゼロになる団信と、がん診断一時金が手厚いがん保険を両方持つ場合、保障の目的が重なっていないか確認が必要です。団信は住宅ローンに効く保障、民間保険は生活費や治療費、収入減に効く保障と考えると整理しやすくなります。
見直しの理想は、住宅ローンの本審査前に生命保険を一度棚卸しすることです。すでに住宅ローンを組んでいる場合は、借入後1年以内、子どもの誕生、育休復帰、金利タイプ変更、借り換え検討時が好機です。保険証券、ローン返済予定表、団信の保障内容、ねんきん定期便、家計簿アプリの支出データをそろえると、FP相談でも話が早く進みます。
まとめ:重要ポイント
- 1共働き夫婦は、団信で消えるローン残高だけでなく、死亡後に残る生活費と教育費を確認することが重要です。
- 2ペアローンでは、原則として亡くなった人の借入分だけが団信の対象になるため、配偶者側の残債に注意が必要です。
- 3金利上昇や育休、転職による収入減を考えると、保険料は払い続けられる水準に抑えることが大切です。
- 4収入保障保険、終身保険、医療保険、就業不能保障は目的を分けて組み合わせると無駄を減らしやすくなります。
- 5住宅ローンの借入前、借入後1年以内、借り換え検討時は生命保険を見直す絶好のタイミングです。
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