【2026年8月更新】告知なし生命保険|70代相続前に見る非課税3基準
更新:
執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)

告知なし生命保険
無選択型保険
70代 生命保険
相続対策 生命保険
死亡保険金 非課税枠
一時払い終身保険
高齢者 保険相談
目次
告知なし生命保険は相続対策になる?まず結論
70代の相続対策として 告知なし生命保険 を検討する人は少なくありません。持病があっても申し込みやすく、死亡保険金の受取人を指定できるため、「預金を保険に替えれば、家族に渡しやすいのでは」と考えやすい商品です。
ただし、告知なしだから安心、相続税が必ず下がる、元本割れしない、というわけではありません。2026年8月時点で特に確認したいのは、死亡保険金の非課税枠、契約後の生活資金、家族間トラブルの3点です。この記事では、70代が相続目的で使う前に見るべき基準を、税制・保険実務・家計管理の目線で整理します。
相続に使う前の70代注意3基準
- 1死亡保険金の非課税枠が本当に使えるかを、法定相続人の人数と受取人で確認します。
- 2契約者、被保険者、保険料負担者、受取人の組み合わせで課税関係が変わらないか確認します。
- 3一時払い後に介護費や医療費が不足しないよう、すぐ使える預金を十分に残します。
- 4外貨建てや変額タイプでは、為替・運用・解約返戻金の変動を円ベースで確認します。
- 5本人の理解と家族への共有が不足して、相続後の不信感や争いにつながらないか確認します。
告知なし生命保険とは何か
ここでいう 無選択型保険 とは、健康状態の告知や医師の診査を不要としている生命保険を指します。一般には「告知なし」「無告知型」と呼ばれることもありますが、商品によっては告知項目を少なくした「引受基準緩和型」と混同されやすいため、パンフレットや設計書で正式な商品区分を確認しましょう。
70代向けでは、一時払い終身保険、葬儀費用に備える終身保険、相続対策を意識した死亡保険などで見かけます。告知がない分、保険金額の上限が低い、契約直後の死亡保険金が払込保険料相当額に限られる、解約返戻金が一定期間少ない、といった制約が設けられることがあります。商品名だけで判断せず、設計書の「死亡保険金」「解約返戻金」「費用」「為替リスク」を横並びで見ることが大切です。
持病がある70代でも相続対策に使えますか?
親が70代で持病もあります。告知なし生命保険なら、相続対策としてすぐ入ったほうがいいですか?
急いで決める前に、相続税がかかる財産規模か、受取人が相続人か、手元資金を減らしすぎないかを確認しましょう。保険に向くケースもありますが、預金のまま残したほうが安全なケースもあります。
相続税の非課税枠は500万円×法定相続人
生命保険が相続で注目される大きな理由は、死亡保険金に 非課税枠 があるためです。国税庁の(相続税の課税対象になる死亡保険金)では、相続人が受け取る死亡保険金について「500万円×法定相続人の数」まで非課税限度額があると説明されています。
たとえば、法定相続人が子ども2人なら非課税枠は1,000万円です。ただし、相続人以外の孫や内縁のパートナーが死亡保険金を受け取る場合、この非課税枠は使えません。相続を放棄した人が受け取る死亡保険金にも非課税枠は適用されないため、「誰が受け取るか」が非常に重要です。
生命保険は、税金を減らす道具というより、誰に、いつ、どの形でお金を渡すかを設計する道具として考えると失敗しにくくなります。
最新統計で見ると相続税の対象は増えている
「うちは相続税がかからないはず」と思っていても、自宅の評価額や有価証券、預貯金の増加で状況が変わることがあります。国税庁の(令和6年分相続税の申告事績の概要)によると、令和6年分の相続税の課税割合は10.4%、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は16万6,730人でした。課税価格の総額や申告税額の総額は、基礎控除額の引下げがあった平成27年分以降で最高とされています。
一方で、課税割合が10.4%ということは、多くの家庭では相続税そのものは発生していません。だからこそ、告知なし生命保険を「節税商品」としてだけ見るのではなく、非課税枠を使える家庭か、遺産分割をスムーズにしたい家庭か、葬儀費用を確実に残したい家庭かを分けて考える必要があります。
基準1:受取人と契約形態を間違えない
70代が相続目的で生命保険を使うとき、最初に見るべきは 契約形態 です。一般的に、親が契約者・保険料負担者・被保険者となり、死亡保険金受取人を子どもにする形では、死亡保険金はみなし相続財産として相続税の対象になります。この場合、受取人が相続人であれば死亡保険金の非課税枠を使える可能性があります。
一方で、子どもが保険料を負担して親を被保険者にし、子どもが死亡保険金を受け取る形では、相続税ではなく所得税の対象になることがあります。契約者、被保険者、保険料負担者、受取人の組み合わせが変わると課税関係が変わるため、相続対策で契約する前に、設計書だけでなく「誰のお金で保険料を払うのか」まで確認しましょう。
基準2:相続税がかからない家庭では節税効果が薄い
生命保険の非課税枠は魅力的ですが、そもそも相続税の基礎控除の範囲内なら、相続税は発生しません。国税庁の(相続税の計算)では、基礎控除額を「3,000万円+600万円×法定相続人の数」としています。
たとえば、法定相続人が2人なら基礎控除は4,200万円です。自宅、預金、投資信託、NISA口座の資産、既契約の保険などを合計しても基礎控除内に収まるなら、節税だけを目的に保険へ資金を移す必要性は高くありません。この場合は、葬儀費用の準備、特定の家族に現金を残す、遺産分割をしやすくする、といった税金以外の目的を明確にしましょう。
契約前に家族で確認したいこと
- 1現在の預金、投資信託、NISA、保険、不動産を一覧にして、相続税が発生しそうか確認します。
- 2死亡保険金の受取人を誰にするか、その人が法定相続人にあたるか確認します。
- 3一時払い保険料を払った後も、介護費、医療費、住み替え費用を残せるか確認します。
- 4設計書で、契約直後の死亡保険金、解約返戻金、為替リスク、手数料を確認します。
- 5本人だけで説明を聞かず、可能であれば受取人や家族も同席して内容を共有します。
基準3:生活資金を保険に寄せすぎない
70代の相続対策で特に避けたいのは、預金を大きく減らして 流動性リスク を高めることです。流動性とは、必要なときにすぐ現金化できるかという意味です。
一時払いの生命保険は、まとまったお金を一度に払い込むため、契約後に介護施設への入居費、住宅修繕費、医療費、家族への生活支援が必要になったとき、すぐ使える現金が不足することがあります。たとえば、預金2,000万円のうち1,500万円を一時払い保険に回すと、残る現金は500万円です。数年以内に介護や住み替えが必要になれば、解約返戻金が払込保険料を下回る時期に解約せざるを得ないかもしれません。相続対策は、亡くなった後だけでなく、生きている間の安心を削らない範囲で行うべきです。
外貨建ての告知なし生命保険は避けるべきですか?
円建てより外貨建てのほうが死亡保険金が大きく見えます。70代の相続対策には向いていますか?
外貨建てが一律に悪いわけではありません。ただし、為替、費用、解約時の元本割れを本人と家族が理解できることが前提です。相続で渡す金額を円で確定させたい家庭は、円建て保険や預金との比較を必ず行いましょう。
外貨建てや一時払い保険は販売動向も確認したい
生命保険協会の(生命保険の動向 2025年版)によると、2024年度末の個人保険の保有契約件数は1億9,530万件で17年連続の増加でした。終身保険の保有契約件数も3,848万件と大きな規模があり、相続や老後の備えとして終身保険を検討する家庭は引き続き多いといえます。
一方で、金融庁の(2025年 保険モニタリングレポート)では、外貨建保険の募集管理やアフターフォローが引き続き論点として扱われています。外貨建保険の苦情件数・発生率は減少傾向にあるものの、特定保険契約以外の保険と比べると苦情発生率は高い水準です。70代の相続目的で外貨建てを選ぶなら、円換算の死亡保険金、解約返戻金、為替手数料、目標到達後の扱いまで確認しましょう。
相続のためにお金を残すことと、これからの生活を守ることは同じくらい大切です。どちらか一方に偏らない設計を意識しましょう。
高齢者の保険契約は説明理解と同席が重要
高齢者の保険契約では、商品内容そのものよりも「本人が理解して契約したか」「家族が後から確認できるか」が問題になることがあります。生命保険協会の(高齢者向けの生命保険サービスに関するガイドライン)では、高齢者への募集時の取組み例として、親族等の同席、複数の募集人による説明、複数回の募集機会、申込後の意向確認などが示されています。
とくに相続目的の保険では、「受取人を誰にしたか」「保険料はいくら払ったか」「解約するといくら戻るか」を家族が知らないまま相続を迎えると、不公平感や疑念が生まれやすくなります。本人の意思を尊重しつつ、設計書、重要事項説明書、保険証券、受取人の情報を整理し、必要な範囲で家族に共有しておきましょう。
NISAや預金との役割分担で考える
70代の資産は、生命保険だけでなくNISAと預金も含めて役割分担を考える必要があります。預金はすぐ使える安心資金、NISAは運用益の非課税を活かす資産形成、生命保険は死亡保険金の受取人指定や非課税枠の活用に向いています。
ただし、NISA口座の資産は死亡時に相続財産となり、死亡後も被相続人のNISA口座で非課税運用が続くわけではありません。保険は受取人に比較的スムーズに渡しやすい一方、途中解約や商品コストに注意が必要です。70代では「増やす」よりも、「使うお金」「残すお金」「すぐ渡したいお金」を分ける発想が現実的です。
まとめ:重要ポイント
- 1告知なし生命保険は持病がある70代でも検討しやすい一方、保障内容や解約返戻金に制約がある場合があります。
- 2死亡保険金の非課税枠は500万円×法定相続人の数ですが、受取人が相続人でないと使えません。
- 3相続税が基礎控除内に収まる家庭では、節税効果よりも受取人指定や遺産分割対策として考える必要があります。
- 4一時払い後に介護費や医療費が不足しないよう、預金、NISA、生命保険の役割を分けて設計しましょう。
- 5高齢者の契約では、本人の意思確認、家族への共有、設計書の比較がトラブル予防につながります。
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