【2026年8月更新】遺族厚生年金と生命保険|夫の5年有期不足額3基準
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執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)

遺族厚生年金
生命保険
夫の死亡保障
5年有期給付
必要保障額
共働き夫婦
収入保障保険
目次
夫が遺族になる家計も、保障の前提が変わり始めています
共働き世帯が増えるなかで、妻の収入が家計の柱になっている家庭は珍しくありません。ところが生命保険の見直しでは、いまだに「夫に万一があった場合」だけを厚く考え、妻に万一があった場合の生活費、住宅ローン、教育費、家事・育児の外注費が後回しになりがちです。
2028年4月施行予定の制度改正では、 遺族厚生年金 の男女差を見直し、18歳年度末までの子どもがいない60歳未満の夫について、原則5年間の有期給付を受けられる方向です。厚生労働省の(遺族厚生年金の見直しについて)では、男性の新たな対象者は推計で年間約1万6千人とされています。夫にとっては受給できる可能性が広がる一方、「5年後に家計がどうなるか」を生命保険で補う視点が重要になります。
この記事で確認する3基準
- 15年間の有期給付中に、毎月いくら不足するかを確認します。
- 2妻の手取り収入だけでなく、家事・育児・介護の代替費用も見積もります。
- 35年後に収入が回復するのか、教育費や住宅費が重くなるのかを分けて考えます。
- 4生命保険は一生分をまとめて考えず、5年・10年・教育終了までの期間で分けます。
2028年改正予定のポイントは「夫も対象拡大、ただし原則5年」
2026年8月時点で押さえたいのは、遺族厚生年金が「一律でなくなる」という話ではないことです。見直しの中心は、子どものいない若い配偶者について、男女で異なっていた扱いをそろえる点にあります。
現行制度では、妻が会社員や公務員として厚生年金に加入していても、子どものいない夫は妻の死亡時に55歳以上でなければ遺族厚生年金の対象になりにくく、原則として60歳まで支給停止となります。日本年金機構の(遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額))でも、現行の受給対象者や年金額の考え方が示されています。
改正後は、18歳年度末までの子どもがいない60歳未満の夫も、原則5年間の有期給付の対象となる方向です。死亡時に生計を同じくしていれば収入にかかわらず受給可能とされる点も、夫側の保障設計では大きな変更点です。ただし、終身で生活を支える制度ではないため、生命保険を減らしてよいかは別問題です。
夫が受け取れるなら生命保険は減らしてよいですか?
妻も正社員なので、改正後に夫が遺族厚生年金を受け取れるなら、妻の死亡保険は少なくてよいのでしょうか?
受け取れる可能性があることと、家計の不足が埋まることは別です。まず5年間の不足額を出し、その後に教育費や住宅費が残るなら、生命保険で期間を区切って補う考え方が現実的です。
対象を考えるときは「子あり」と「子なし」を分ける
夫の不足額を考えるときは、まず子どもの有無で分けます。18歳到達年度末までの子がいる場合は遺族基礎年金も関係し、教育費や育児費用の見積もりが大きくなります。生命保険文化センターの(公的な遺族年金の仕組みについて知りたい)では、2026年度の遺族基礎年金額として、70歳以下の配偶者が受け取る場合、子ども1人で年1,091,100円、子ども2人で年1,334,900円と紹介されています。
一方、子どものいない夫婦では、遺族基礎年金がないため、遺族厚生年金の有期給付と夫自身の収入で生活を再建できるかが焦点になります。また、妻が厚生年金に加入していない場合は、そもそも遺族厚生年金の前提が変わります。会社員、公務員、一定条件を満たすパート勤務など、妻の働き方によって公的保障が変わるため、保険金額を決める前に年金加入状況を確認しましょう。
妻の生命保険は、妻の収入だけでなく、妻が担っていた暮らしの機能をどう守るかまで含めて考えると、必要額が見えやすくなります。
基準1:5年間の生活費不足を月額で出す
最初の基準は、 5年有期給付 の期間に家計が毎月いくら不足するかです。制度改正後の有期給付では、有期給付加算が上乗せされ、現在の遺族厚生年金額の約1.3倍となる予定です。ただし、実際の金額は妻の厚生年金加入期間、報酬、家族構成で変わります。
不足額の目安は、毎月の生活費、住宅費、教育費、保険料、車関連費、通信費などを合計し、夫の手取り収入、公的年金見込み、使ってよい貯蓄額を差し引いて出します。ここで出た月額不足に60か月を掛けると、5年間で必要な死亡保障のたたき台になります。
例えば、妻の死亡後に残る支出が月36万円、夫の手取りが月28万円、見込める遺族厚生年金が月6万円、取り崩してよい貯蓄が月2万円相当なら、月額不足はゼロに近くなります。反対に、夫が時短勤務で手取り月22万円に下がるなら、月6万円前後の不足が生じ、5年間で約360万円の生活再建資金が必要になります。
不足額を出す手順
- 1現在の毎月の固定費と変動費を、ざっくりでよいので合計します。
- 2妻に万一があった後も残る住宅ローン、家賃、教育費を別枠で確認します。
- 3夫の手取り収入と、見込める遺族年金を差し引きます。
- 4家事代行、延長保育、病児保育、親族支援に伴う交通費などを追加します。
- 5月額不足に60か月を掛け、葬儀費用や引っ越し費用などの一時費用を足します。
基準2:妻の収入だけでなく「代替コスト」を入れる
夫の生命保険設計で見落としやすいのが、妻が担っていた家事・育児・家計管理の代替コストです。妻が亡くなった後、夫が同じ働き方を続けられるとは限りません。残業を減らす、時短勤務にする、転職する、親族の支援を受けるなど、収入が下がる選択を迫られることがあります。
総務省の家計調査年報2025をもとにした生命保険文化センターの(世帯の人数、共働き世帯かによって家計の状況はどう違う?)では、世帯主60歳未満の勤労者世帯のうち、夫婦と未婚の子ども1人の共働き世帯の消費支出は月平均約36.1万円、黒字は月約23.0万円とされています。妻の収入がなくなるだけでなく、夫の働き方が変わると、この黒字部分が一気に小さくなる可能性があります。
特に未就学児や小学生がいる家庭では、延長保育、習い事の送迎、病児保育、食事の外注が増えやすくなります。妻の年収が高い家庭ほど死亡保障が必要、という単純な話ではありません。妻の年収が比較的低くても、夫の収入減や外注費が発生するなら、一定期間の保障が必要になることがあります。
妻が扶養内パートでも保険は必要ですか?
妻は扶養内パートです。収入は大きくないので、死亡保険は不要と考えていました。
収入だけで判断しないほうが安全です。育児、家事、親の介護、家計管理を妻が多く担っている場合、夫の収入減や外注費が発生します。少額でも期間を区切った保障を検討する価値があります。
基準3:5年後に不足が消えるか、むしろ増えるかを見る
3つ目の基準は、 5年後の不足額 です。遺族厚生年金が原則5年間の有期給付になる場合、5年後に夫の収入が安定し、子どもが成長し、支出が下がるなら、死亡保障は5年分を厚めにする設計が合いやすくなります。
反対に、5年後に高校・大学進学、住宅ローンの返済、親の介護費用が重なるなら、5年で保障を切るのは危険です。その場合は、5年間の生活再建費と、教育終了までの不足額を分けて考えると整理しやすくなります。
遺族厚生年金には、5年経過後も障害状態にある人や収入が十分でない人に対する継続給付が予定されています。厚生労働省は、単身の場合、就労収入が月額約10万円以下なら継続給付が全額支給され、収入が増えるにつれて調整される仕組みを示しています。とはいえ、収入や年金額によって支給停止となることもあるため、最初から家計の柱として過大に見込まないほうが無難です。
5年は短すぎると不安になる一方で、生命保険を必要な期間に絞るための目印にもなります。家計の再建期間として具体的に試算することが大切です。
生命保険は「定期保険」と「収入保障」を使い分ける
夫の不足額を補う生命保険は、まとまった一時金で受け取る定期保険と、毎月のように受け取る収入保障タイプを使い分けると考えやすくなります。葬儀費用、引っ越し費用、当面の生活防衛資金は一時金で準備し、毎月の生活費不足は収入保障タイプで補う、といった組み合わせです。
例えば、葬儀費用や当面の整理資金として300万円の定期保険を置き、生活費不足は月10万円を10年間受け取れる収入保障保険で補う、という考え方があります。子どもが小さい家庭なら教育終了まで長めに、子どものいない共働き夫婦なら5年から10年に絞るなど、期間を分けると保険料を抑えやすくなります。
ただし、保険料を増やしすぎると、今の家計を圧迫します。NISAやiDeCoでの資産形成、教育費の積立、住宅ローンの繰上返済とのバランスも必要です。死亡保障は「不安だから多め」ではなく、期間と不足額を決めてから設計しましょう。
夫婦で確認したい書類と相談前の準備
相談前に完璧な資料をそろえる必要はありませんが、妻のねんきん定期便、夫婦の源泉徴収票、住宅ローン残高、保険証券、毎月の支出メモがあると、必要保障額の試算がスムーズです。保険証券は写真で残しておくだけでも、保障内容の確認に役立ちます。
特に共働き世帯では、夫婦それぞれの死亡保障、医療保障、就業不能時の備えを別々に見たうえで、家計全体として重複や不足がないかを確認することが大切です。遺族厚生年金の改正は公的保障の話ですが、最終的な安心は、公的保障、貯蓄、資産形成、生命保険を合わせてつくるものです。
まとめ:重要ポイント
- 12028年4月施行予定の見直しでは、18歳年度末までの子どもがいない60歳未満の夫も、原則5年間の遺族厚生年金の対象となる方向です。
- 2夫が遺族になる場合は、5年間の月額不足、妻の家事・育児の代替コスト、5年後の教育費・住宅費を分けて試算します。
- 3有期給付加算や継続給付は予定されていますが、家計の不足をすべて埋める前提で考えすぎないことが大切です。
- 4生命保険は定期保険や収入保障タイプを使い、必要な期間と金額に絞ると家計負担を抑えやすくなります。
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