【2026年7月更新】一時払終身保険と定期預金|金利上昇期の3基準
更新:
執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)

一時払終身保険
定期預金
金利上昇
予定利率
解約返戻金
相続対策
預金保険制度
目次
金利が上がるほど「預け先選び」は難しくなります
2026年7月時点では、預金金利や生命保険の予定利率に注目が集まり、退職金、相続で受け取った資金、子どもが独立した後の余裕資金をどこに置くべきか迷う人が増えています。特にまとまったお金は、 一時払終身保険 と 定期預金 を単純な利率だけで比べてしまいがちです。
ただし、両者はそもそも役割が違います。定期預金は「安全性と使いやすさを重視して、必要な時期まで置くお金」、一時払終身保険は「死亡保障や受取人指定を含めて、家族に残すお金」と考えると整理しやすくなります。この記事では、金利上昇期に見落としやすい3つの基準で、判断の順番を解説します。
先に押さえる3つの判断基準
- 1使う予定があるお金は、満期時期や中途解約の条件を確認し、定期預金など流動性の高い置き場所を優先します。
- 2家族に確実に残したいお金は、死亡保障、受取人指定、相続時の使いやすさを含めて一時払終身保険を検討します。
- 3利率だけでなく、解約返戻金、税金、預金保険制度、生命保険契約者保護機構、相続時の扱いを同じ表に並べて比較します。
- 4外貨建てや市場価格調整付きの商品は、為替や金利上昇時の解約返戻金の変動まで確認します。
2026年7月の前提:金利上昇で両方の見え方が変わった
日本では「金利のある世界」が広がっています。日本銀行は2026年6月16日の(金融市場調節方針の変更について)で、無担保コールレートを1.0%程度で推移するよう促す方針を示しました。こうした環境では、銀行預金だけでなく、円建ての終身保険や個人年金保険の条件にも変化が出やすくなります。
金融庁の(2025年 保険モニタリングレポート)でも、金利上昇を背景に、終身保険や年金保険などで予定利率引き上げの動きが広がっていること、国内金利の上昇などに伴い一時払円建保険の販売が増加したことが示されています。
一方、定期預金も普通預金より高い金利を提示する銀行が増えています。預金は仕組みがシンプルで使いやすい反面、死亡保障や受取人指定といった保険ならではの機能はありません。つまり、 金利上昇期 ほど「利率が高いほう」ではなく「目的に合うほう」を選ぶ必要があります。
定期預金より予定利率が高ければ保険でよいですか?
一時払終身保険の予定利率が定期預金より高く見えます。利率が高いなら保険のほうが得ですか?
予定利率は、銀行預金の金利と同じ意味ではありません。保険料全額にそのまま利息が付くわけではなく、死亡保障や保険会社の費用なども含めて設計されます。比較するときは、予定利率ではなく、何年後に解約返戻金が払込保険料を上回るか、死亡保険金はいくらか、税引後の手取りはいくらかを確認しましょう。
一時払終身保険と定期預金の違いを早見表で確認
比較の入口は、次のように整理すると分かりやすくなります。
| 比較項目 | 一時払終身保険 | 定期預金 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 死亡保障、相続、長期の資金承継 | 元本を守りながら一定期間預ける |
| 利率の見方 | 予定利率、積立利率、解約返戻率を確認 | 預金金利と税引後利息を確認 |
| 途中解約 | 契約初期は元本割れの可能性がある | 中途解約利率になることが多い |
| 保護の仕組み | 生命保険契約者保護機構の対象。ただし預金保険とは仕組みが違う | 預金保険制度の対象 |
| 相続時の特徴 | 受取人指定、死亡保険金の非課税枠が使える場合がある | 遺産分割の対象になりやすい |
| 向きやすい期間 | 10年以上など長期で残す資金 | 1年、3年、5年など使う時期が見える資金 |
預金については、金融庁の(預金保険制度)で、一般預金等は1金融機関ごとに預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されると説明されています。まとまった資金を1行に集める場合は、この上限も確認しておきたいところです。
一方、生命保険会社が破綻した場合は、(生命保険会社が破綻した場合、保護機構は主にどのような役割を果たすのですか。)で説明されているように、生命保険契約者保護機構が保険契約の継続を図り、原則として破綻時点の責任準備金等の90%までを補償します。預金のように「元本1,000万円まで」という仕組みではないため、保護制度も同じ土俵で確認しましょう。
金利が上がる局面では、数字が目に入りやすくなります。でも本当に大切なのは、そのお金をいつ、誰のために、どんな形で使うのかです。
基準1:5年以内に使う予定があるなら定期預金が基本
住宅リフォーム、車の買い替え、子どもや孫への教育資金援助、介護施設の入居一時金など、5年以内に使う可能性がある資金は、原則として流動性を優先します。ここでの 流動性 とは、必要なときに現金化しやすいことです。
一時払終身保険は、契約してすぐに解約すると解約返戻金が払込保険料を下回ることがあります。さらに、市場金利に応じて解約返戻金が増減する市場価格調整付きの商品では、契約後に金利が上がると解約返戻金が下がる場合があります。予定利率が高く見えても、短期で使うお金を入れてしまうと、必要なときに元本割れで取り崩すことになりかねません。
短期資金は定期預金、普通預金、個人向け国債などを組み合わせて、現金化しやすさを保つのが現実的です。個人向け国債の変動10年は、財務省の(「変動10年」商品概要)で説明されている通り、発行から1年経過すれば中途換金が可能で、実勢金利に応じて半年ごとに適用利率が変わる仕組みです。預金や保険だけでなく、使う時期に合わせた選択肢として比較できます。
生命保険の一時払は増えているが、全員向けではない
生命保険協会の(生命保険の動向 2025年版)では、2024年度の個人保険の収入保険料において、一時払の構成比が39.9%と示されています。まとまった資金を一括で保険に入れるニーズが一定程度あることは確かです。
ただし、販売が増えていることと、自分の家計に合うことは別です。たとえば、手元資金が1,500万円あり、そのうち数年以内の医療・介護・住宅修繕に使う可能性が800万円あるなら、全額を一時払終身保険に入れるのは慎重に考えるべきです。保険に向くのは、生活費や緊急資金を残したうえで、長期で家族に承継したい部分です。
契約前に確認したいチェック項目
- 1そのお金を使う予定時期が、1年以内、3年以内、5年以上のどれに近いかを分けます。
- 2一時払終身保険は、払込保険料、死亡保険金、解約返戻金の推移を年ごとに確認します。
- 3定期預金は、税引後の利息、中途解約利率、預金保険制度の上限を確認します。
- 4相続目的なら、法定相続人の人数、受取人、死亡保険金の非課税枠を確認します。
- 5外貨建て保険を検討する場合は、為替リスク、手数料、円での手取り額を必ず確認します。
基準2:家族に残すお金なら死亡保障と受取人指定を見る
一時払終身保険の強みは、単なる運用利回りではなく、死亡保障と受取人指定にあります。預金は相続財産として遺産分割の対象になりやすい一方、生命保険金は契約で指定した受取人が受け取る形になるため、葬儀費用や当面の生活費として使いやすいケースがあります。
また、相続税の計算では、死亡保険金に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が使える場合があります。国税庁の(No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金)でも、死亡保険金の非課税限度額は500万円×法定相続人の数と説明されています。ただし、相続人以外の人が受け取る死亡保険金にはこの非課税の適用がない点にも注意が必要です。
たとえば法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人なら、死亡保険金の非課税限度額は1,500万円です。ただし、契約者、被保険者、受取人の組み合わせによって、相続税ではなく所得税や贈与税の対象になることがあります。ここは自己判断で決めず、契約前に確認しておきましょう。
相続対策なら一時払終身保険を多めにしてよいですか?
相続税の非課税枠があるなら、預金より一時払終身保険を多くしたほうがよいのでしょうか?
非課税枠は有効な考え方ですが、生活費や医療・介護費まで保険に入れてしまうのは危険です。まず手元資金を確保し、そのうえで家族に残す目的の資金だけを保険で設計するのが基本です。
基準3:税引後とインフレ後の手取りで比べる
定期預金の利息には、原則として20.315%の税金がかかります。一時払終身保険も、解約して利益が出た場合や死亡時の受け取り方によって、所得税、相続税、贈与税のいずれかが関係することがあります。つまり、表面上の利率だけでは本当の手取りは分かりません。
たとえば、定期預金の年利が高く見えても、税引後では受け取る利息が約8割になります。一方、一時払終身保険は、解約返戻金が払込保険料を上回る時期、課税関係、受取人の設定で手取りが変わります。比較するときは、パンフレットの予定利率ではなく、見積書の「解約返戻金推移表」と「死亡保険金額」を見て、実際に受け取れる金額で比べることが大切です。
さらに、物価上昇も考える必要があります。長期で固定される円建て保険は安心感がある一方、将来の物価が上がると、死亡保険金や解約返戻金の実質的な価値が目減りする可能性があります。老後資金全体で見るなら、NISA、iDeCo、預金、保険を役割ごとに分ける発想が大切です。
一時払終身保険は、預金より少し利率がよく見える商品ではなく、保障と相続設計を含めて使う道具です。預金と同じ感覚で契約すると、後から使いにくさに気づくことがあります。
金利上昇期にありがちな失敗は「今すぐ全額」動かすこと
金利が上がっていると、「今のうちに高い利率で契約したほうがよいのでは」と感じやすくなります。しかし、金利上昇期は今後さらに条件が変わる可能性もあります。まとまった資金を一度に動かすより、使う時期ごとに分けて考えるほうが失敗を防ぎやすくなります。
たとえば、1年以内に使う生活防衛資金は普通預金、3年程度使わないお金は定期預金、10年以上使わず家族に残す目的のお金は一時払終身保険、将来の成長を狙うお金はNISAというように、資金の置き場所を分ける方法があります。大切なのは、商品単体の優劣ではなく、家計全体で無理がないかです。
相談前に用意すると判断が早くなるもの
FP相談を使う場合は、完璧な家計簿を用意する必要はありません。ただ、預金残高、既契約の保険証券、退職金や相続資金の金額、今後10年で予定している大きな支出を書き出しておくと、判断がかなりスムーズになります。
特に一時払終身保険は、年齢、健康状態、契約形態、受取人、相続人の人数によって向き不向きが変わります。定期預金との比較も、単に金利表を見るだけでなく、使う予定、家族構成、相続の希望まで含めて整理することが重要です。迷ったら、まずAI相談で論点を洗い出し、その後にオンラインFP相談で具体的な金額に落とし込む流れがおすすめです。
まとめ:重要ポイント
- 15年以内に使う可能性がある資金は、原則として定期預金、普通預金、個人向け国債など流動性の高い置き場所を優先します。
- 2一時払終身保険は、死亡保障、受取人指定、相続時の資金準備に向く一方、短期解約では元本割れに注意が必要です。
- 3比較するときは、予定利率ではなく、解約返戻金、税引後手取り、預金保険制度、生命保険契約者保護機構、相続税の扱いを同じ土俵で確認します。
- 4金利上昇期ほど、預金、保険、NISA、iDeCoを目的別に分け、全額を一度に動かさないことが大切です。
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