【2026年7月更新】生命保険料控除と親の扶養|75歳以上の3基準
更新:
執筆者山中 忠 (FP1級・証券外務員一種保持)

生命保険料控除
親の扶養
75歳以上
扶養控除
介護費
医療費控除
後期高齢者医療
目次
75歳以上の親を扶養に入れる前に、まず分けて考える
75歳以上の親の生活費や介護費を子どもが支えていると、「親を扶養に入れれば税金が下がるのでは」「親の生命保険料も控除できるのでは」と考える方が増えています。この記事のテーマは 生命保険料控除と親の扶養 です。
ただし、75歳以上では税金の扶養、会社の健康保険、後期高齢者医療、介護保険のルールが別々に動きます。節税額だけで判断すると、親の医療・介護費の自己負担、後期高齢者医療保険料、兄弟姉妹との負担割合を見落とすことがあります。
この記事では、2026年7月時点で確認したい「税の扶養」「生命保険料控除」「介護費・医療費」の3基準に分けて、年末調整や確定申告の前に整理すべきポイントをまとめます。
最初に確認したい書類
- 1親の公的年金等の源泉徴収票を確認し、年金収入と合計所得金額の目安を把握します。
- 2親と子が同居か別居か、仕送りや生活費負担など生計を一にしている実態を説明できるようにします。
- 3親の後期高齢者医療保険料、介護保険料、医療費通知、介護サービス領収書を手元に集めます。
- 4子が親の保険料や医療費を払っている場合、誰の口座から支払ったかを通帳やカード明細で確認します。
- 5生命保険料控除証明書、医療費の領収書、兄弟姉妹間の精算メモを年末調整用と確定申告用に分けておきます。
基準1:親の扶養控除は「税金」だけの話
75歳以上の親でも、要件を満たせば子の所得税で扶養控除を受けられる可能性があります。国税庁の(扶養控除)では、扶養親族は納税者と生計を一にしていること、配偶者以外の親族であることなどが要件とされています。
2026年分の所得税では、令和7年度税制改正により扶養親族等の所得要件が見直され、扶養親族の合計所得金額の要件は58万円以下です。国税庁の(令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について)でも、令和7年分以後の所得税に適用される改正として案内されています。
所得税の控除額は、70歳以上の老人扶養親族なら原則48万円、同居老親等に該当する場合は58万円です。ここで大切なのは、 税法上の扶養 と会社の健康保険の扶養は別物という点です。75歳以上の親は原則として後期高齢者医療制度に加入するため、子の勤務先の健康保険の被扶養者にはなりません。
親の年金がいくらまでなら扶養に入れられますか?
母は76歳で、収入は老齢年金だけです。いくらまでなら私の扶養控除に入れられますか?
2026年分の所得税では、扶養親族の合計所得金額が58万円以下かを確認します。65歳以上で公的年金だけの場合、公的年金等控除を踏まえると、老齢年金収入はおおむね 年金収入168万円以下 が目安です。ただし、個人年金、給与、不動産収入などがある場合は合算が必要です。遺族年金や障害年金のような非課税所得の扱いも含め、源泉徴収票だけで判断しきれないときは税務署や専門家に確認しましょう。
「同居なら必ず得」とは限らない理由
同居すると、所得税の扶養控除では同居老親等として控除額が大きくなる可能性があります。一方で、同居の事実と住民票上の世帯を同じにすることは別問題です。住民票上の世帯や世帯の課税状況は、介護保険料、介護サービスの自己負担、高額介護サービス費、施設入所時の食費・居住費の軽減判定に関係することがあります。
また、後期高齢者医療制度の自己負担割合は、親本人や世帯の所得で判定されます。厚生労働省の(後期高齢者の窓口負担割合の変更等)では、一定以上の所得がある75歳以上の人は2割負担となり、現役並み所得者は3割負担と説明されています。2025年9月30日には2割負担導入時の配慮措置も終了しているため、2026年は「税金が下がるか」だけでなく、医療費の月ごとの負担見込みも一緒に見たい時期です。
さらに、厚生労働省の(後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について)によると、令和8・9年度の医療分の平均保険料額は全国平均で月額7,989円の見込みです。実際の保険料は都道府県の広域連合で異なるため、親の住所地の通知や自治体窓口で確認しましょう。
扶養控除は子どもの税金を軽くする仕組みです。親の医療費や介護費まで自動的に安くなる制度ではない、と分けて考えると判断を誤りにくくなります。
基準2:生命保険料控除は「誰が払ったか」が出発点
生命保険料控除は、所得税や住民税を計算するときに、支払った一定の保険料を所得から差し引ける制度です。国税庁の(生命保険料控除)にある通り、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の枠があります。
75歳以上の親を扶養しているからといって、子の生命保険料控除が自動的に増えるわけではありません。まず見るべきは、契約者名義だけではなく、 誰が実際に払ったか と、保険金受取人が控除要件に合うかです。
たとえば、親名義の医療保険でも、子が自分の口座から保険料を負担し、受取人要件も満たすなら、子の生命保険料控除の対象になり得ます。反対に、親の年金口座から引き落とされている保険料を、子が「扶養しているから」と自分の控除に入れることは通常できません。
2026年の6万円枠は「親の扶養」ではなく子育て世帯向け
2026年分の所得税では、23歳未満の扶養親族がいる場合、新制度の一般生命保険料控除の所得控除限度額が4万円から6万円に広がる措置があります。ただし、これは75歳以上の親を扶養していることによる拡充ではありません。
生命保険協会の(生命保険料控除に関する税制改正について)でも、令和8年の生命保険料控除について、対象は23歳未満の扶養親族を有する場合とされています。さらに、一般・介護医療・個人年金を合わせた所得税の全体限度額12万円は変わりません。
親の介護を支える世帯では、6万円枠の有無よりも、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3枠をどう使っているか、控除のために無理な保険料を払っていないかを確認する方が実務的です。
親の生命保険料を子が払えば、必ず控除できますか?
父の死亡保険の保険料を、私が払っています。私の生命保険料控除に入れてよいですか?
可能性はありますが、支払者、受取人、契約内容を確認してから判断します。生命保険料控除だけでなく、将来の死亡保険金の税金も重要です。たとえば、親が被保険者、子が保険料負担者、同じ子が受取人なら所得税の一時所得、親が保険料を負担して子が受け取るなら相続税、保険料負担者と受取人が別の子なら贈与税が関係することがあります。
親の保険料を子が払う場合の注意点
高齢の親の保険では、相続対策、葬儀費用、介護費準備、医療保障が一つの契約に混ざりやすくなります。保険料控除で戻る税額だけを見て新しく加入すると、保険料が家計を圧迫したり、いざ保険金を受け取るときの税金で想定外の負担が出たりします。
特に75歳以上では、加入できる商品が限られ、保険料も高くなりがちです。親のために保険を追加する前に、既契約の死亡保険金、医療保険の入院日額、介護特約の有無、指定代理請求人、保険料払込期間を確認しましょう。
子ども側の家計では、親への仕送り、介護帰省費、介護離職リスク、自分の老後資金、子どもの教育資金が同時に動きます。生命保険料控除の数千円から数万円の税効果だけでなく、毎月のキャッシュフローが続くかを優先して見ることが大切です。
75歳以上の親世帯で使える控除の見分け方
- 1親を扶養控除に入れる場合は、親の所得要件、生計を一にする実態、同居老親等に該当するかを確認します。
- 2子が親の医療費を負担した場合は、医療費控除の対象になる支出かを領収書や医療費通知で分けます。
- 3介護保険料や後期高齢者医療保険料を子が口座振替などで直接支払った場合は、社会保険料控除の扱いを確認します。
- 4年金天引きの介護保険料や後期高齢者医療保険料は、原則として年金受給者本人の社会保険料控除として扱います。
- 5生命保険料控除は、保険料負担者と受取人要件を確認し、将来の保険金課税までセットで見ます。
基準3:介護費は医療費控除・社会保険料控除で拾う
親の介護費が増えている家庭では、生命保険料控除よりも医療費控除や社会保険料控除の方が効くケースがあります。医療費控除は、本人または生計を一にする親族のために支払った医療費が対象です。
ただし、介護サービス費はすべてが医療費控除になるわけではありません。国税庁の(医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価)では、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションなどの医療系サービスは対象になり、訪問介護や通所介護などは医療系サービスと併せて利用する場合に対象となるものがあると説明されています。領収書に 領収書の医療費控除対象額 が記載されているかを確認しましょう。
施設サービスも扱いが分かれます。国税庁の(医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価)では、特別養護老人ホームは介護費・食費・居住費に係る自己負担額の2分の1、介護老人保健施設や介護医療院は一定の自己負担額が医療費控除の対象になるとされています。高額介護サービス費として払い戻しを受けた金額は、医療費から差し引いて計算します。
親のために保険料や介護費を払うときは、控除でいくら戻るかより、来年も同じ支払いを続けられるかを先に確認したいです。
社会保険料控除は「支払方法」で結果が変わる
介護保険料や後期高齢者医療保険料は、社会保険料控除の対象です。国税庁の(社会保険料控除)では、自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合、その支払った金額について所得控除を受けられるとされています。
ここでつまずきやすいのが支払方法です。親の年金から天引きされている保険料は、原則として親本人が支払ったものです。一方、納付書や口座振替で子が直接支払っている場合は、子の社会保険料控除として扱える可能性があります。
年末調整や確定申告では、「親の分だから子が控除できる」ではなく、「誰が、いつ、どの方法で払ったか」を確認します。通帳、納付済通知書、自治体からの保険料決定通知、年金振込通知書を並べると、生命保険料控除・医療費控除・社会保険料控除の切り分けがしやすくなります。
年末調整と確定申告の実務ポイント
会社員の方は、生命保険料控除は年末調整で手続きできることが多いです。一方、親の医療費控除、年の途中から親を扶養に入れるケース、複数の兄弟姉妹で介護費を負担しているケースでは、確定申告で整理した方がよい場合があります。
親が年金受給者の場合、国税庁の(公的年金等の課税関係)にある通り、公的年金等の収入金額が400万円以下で、公的年金等以外の所得金額が20万円以下なら、所得税の確定申告が不要となる制度があります。ただし、医療費控除や社会保険料控除で還付を受けたい場合は、確定申告をした方がよいことがあります。住民税の申告が必要なケースもあるため、自治体の案内も確認しましょう。
子ども側は、年末調整前に親の所得、扶養控除の可否、生命保険料控除証明書、医療費通知、介護サービス領収書、兄弟姉妹との精算記録を並べて、税金が下がる額と今後1年の介護費見込みをセットで確認します。迷ったら、勤務先の総務、税務署、自治体、FPに早めに相談するのがおすすめです。
生命保険の見直しは「親の保障」と「子の家計」を分ける
親の医療・介護費が心配になると、親に新しい保険を検討したくなるかもしれません。しかし75歳以上では、加入できる商品が限られたり、保険料が高くなったりします。まずは公的医療保険、介護保険、高額療養費、高額介護サービス費、預貯金、既契約の保険を確認しましょう。
子ども側は、親への仕送りや介護離職リスクによって、自分の老後資金や子どもの教育資金が崩れないかも重要です。NISAやiDeCo、生活防衛資金、死亡保障をまとめて見ると、保険料控除だけでは見えない優先順位が分かります。
家族会議では、親の年金収入、預貯金、毎月の介護費、兄弟姉妹の負担割合、緊急時の立替ルールを数字で共有しましょう。税金の話から始めても、最終的には「誰が、どこまで、いつまで支えられるか」という家計の話に落とし込むことが大切です。
まとめ:重要ポイント
- 175歳以上の親は、税法上の扶養控除の対象になっても、子の健康保険の扶養には原則入れません。
- 22026年分の所得税では扶養親族の所得要件が58万円以下となり、公的年金だけなら年金収入168万円以下が一つの目安です。
- 32026年の生命保険料控除の6万円枠は23歳未満の扶養親族がいる場合の措置で、75歳以上の親の扶養による拡充ではありません。
- 4親の医療費・介護費は、医療費控除や社会保険料控除で拾える可能性があるため、領収書と支払者を整理しましょう。
- 5節税額、後期高齢者医療、介護保険料、家族の資金繰りを一体で見て、無理のない支援方法を決めることが大切です。
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